戦場のアリア [映画[2006]]
出演:ダイアン・クルーガー、ベンノ・フュルマン、ギョーム・カネ、ゲーリー・ルイス他
監督:クリスチャン・カリオン
原題:JOYEUX NOEL 2005年 フランス・ドイツ・イギリス合作
1914年。第一次世界大戦中の雪降るクリスマス・イヴに実際に起きた奇跡を描く。
舞台はフランス北部の最前線デルソー。農場を挟み、ドイツ軍VSフランス軍、イギリス・スコットランド連合軍の両陣営がにらみ合いを続ける。泥沼化しつつあった戦局のなか、最前線の兵士達の士気は下がりつつあった。皆クリスマスには家に帰れると思っていたのだが、どうやらそれは叶わぬと気づき始めたからだ。
そんな中、一人の女性がドイツ側陣営に慰問にやってくる。彼女は有名なオペラ歌手のアナで、実は最前線にいる夫に会う為だけに、あの手この手で無理難題を聞き入れさせ、戦地に赴いたのだった。そして、最前線から離れた軍の司令部で、即席のクリスマス・コンサートが始まる。長らく歌ってなかった夫のニコラウスを巧みにリードしながら、2人の歌声は美しく響きわたってゆく。
そのあとニコラウスとアナは、別の目的を隠し、最前線にも歌を届けたいと申し入れる。上層部が渋る中、アナがまたしても有力者に支援を仰ぎ、彼女たちの申し出は受け入れられる。そして睨み合いの続く最前線へ・・・
時を同じくしてスコットランド軍の陣営では、バグパイプの演奏でささやかにクリスマスを祝っていた。その音色はフランス軍にもドイツ軍にも響き渡り、彼らの心に安らぎを与えてゆく。
曲目は『聖しこの夜』(“静けき”とかいろんな名前がついてます)。と、突然クリスマスツリーを手にしたニコラウスが、伴奏に合わせて歌いながら、ノーマンズ・ランドへと歩み出た。
砲弾の音のかわりに響く見事なテノールに、一人また一人と、塹壕から兵士が現れる。彼らの手には、ライフルのかわりにキャンドルの灯ったツリーやシャンペン、ワインなどが握られていた・・・・・
たとえ歴史の狭間に押し込められ隠されようとも、良い行いは人々の記憶に残り語り継がれてゆくのですね。戦時中は国の恥部と感じていた人たちも、きっと長い年月や勝敗を越えて、同じ事柄に対する受止め方が変わってきてるのかもしれませんね。
そこに居たすべての人が友好的だったわけでもないし、反対に全員が悪い人だったわけでもない。皆、残してきた家族を気遣う、普通の人間なんですよね。今のように職業としての軍人ではないから、統率とるの難しそうです(笑)
これは、作品の内容というよりも、その歴史的な事実に感動をおぼえる作品だと思います。あ、映像が悪かったとかそういうのではないです。
アナとニコラウスの歌声はすばらしいですね。もちろん(笑)吹き替えなのですが、それが映像でまるわかりだったのが、もうちょっとどうにかならなかったかな・・と(笑)
フランス軍中尉役のギョーム・カネ。監督などもしている多才な人らしいですね。甘いマスクがとても良い。
ドイツ軍中尉役はダニエル・ブリュール。(グッバイ、レーニンは未見だが)今までに観た彼の作品の中で一番かっこいい役柄だったと思います。
パーマー司祭役のゲーリー・ルイス。リトル・ダンサーのパパ役でも泣かしてくれましたが、これもいい感じです。自ら志願して戦地に赴いた設定で、出来る限りのことを当たり前のように行う、敬虔な司祭の役です。
この“クリスマス休戦”のあと、それぞれ処罰があったものと思います。生きては帰れないような戦地へ送り出された小隊もあったことでしょう。せっかく殺し合い(戦争)の無益さに気づいたのに、それを広めることが出来ないまま、闇に葬られてしまうなんて・・・・・